みどりの中に光る絹の町川俣
トップページ > 昔ばなし > 昔ばなし > ばかでも総領(あほな総領息子の話) > ばかでも総領(あほな総領息子の話)(1)(現代語版)

ばかでも総領(あほな総領息子の話)(1)(現代語版)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、あるところにあほな総領息子がいました。
正月が近づいたので、
「町に行って、せぎよい(※)してこい。」
と言われて、五円あずけられました。
むかしの五円は大金でした。
首に風ろ敷をしばって、五円を持って町に行きました。
(しかし、)何を買っていいのかわからない。
「せぎよいしてこい。」
と言われても、そんなこと知らなかった。

町では正月がくるから、あっちでもこっちでも道の両側に店が並んでいました。
何を買ったらいいかと、あっちへ行き、こっち行きしていたら、
「これ、これ、ちょっときてみろ。
おめえさん、何を買いにきたのか。」
と、声をかけられました。
(うろうろしていた)様子でわかったようだ。
「せぎよいしてこいと、金をもらってきた。」
「いくらもらってきた。」
「これだけだ。」
と、出してみせたら、
「五円か、せぎよいにはこれが一番だ。」
と、その人は、お獅子神楽を売っていました、
小さいのから大きいのから、いくつも並べてありました。
「このお獅子神楽を持って行けば、悪魔払って年取られるので、一番いい。」
「それじゃ、これを買っていく。」
と、神楽面を買って家にせおって帰ってきました。
「せぎよいしてきた。」
と、(風ろ敷を)ゴロゴロと転がしてやりました。
おとっつぁがあけてみたら、神楽面一つきりでした。
「なんだ、これだけか。」
「これが一番いいと言うから、買ってきた。」
「このバカ。正月がくるというのに神楽面一つ買ってきて、どうするのか。
おまえというやつは、よくよくあほうな野郎だ。
これ一つくれてやるから、せおって出て行け。
家にはおけない。行きたいところに行け。」
と、神楽面一つ風ろ敷にせおわされて、追い出されてしまいました。
仕方がないからしおしおと出て行きました。
だんだん日が暮れて、心細くなってきて、
さて、どこに寝ようかと、そっち、こっちさがしていたら、
人が住んでいないような小屋を見つけました。
今日はここに寝ようと思っていたところ、遠くから人声がしました。
ゴヤゴヤ、ガヤガヤと近づいてきたので、そーと戸を開けてみたら、
十人も十五人もぞろぞろとやってくるところでした。
これはいけない。
みつかったらいじめられると思って、天井のはりに上がって、
野郎共なにしにきたのかと見ていました。

そしたら、金をひろげてやったり取ったりしてばくちを打ち始めました。
ばくちなんて見たことなかったので、いやぁ、これはおもしろい。
おらもひとついれてもらおうと、盛りになった頃、神楽面かぶって、
「おらとこいれろー。」
と、はりの上からドサッとまん中に落ちたらば、
いやあ、集まった連中がびっくりしてしまい、
「ほら、化け物だー。」
と、お金をおきざりにして逃げていってしまいました。
いや、これはいい。
泊まるところないから、このくらい集めて持って行けば、
(おとっつぁ)許してくれるだろうと思って、金をもって家に帰ってきました。
「おら、金もうけしてきた。」
と、大きいこと言っておとっつぁに見せました。
「どこでそういう金もうけしてきた。」
「これこれ、こういうわけです。」
「いやあ、たいしたものだ。これだけあれば働かなくてすむ。」
と(総領を家から)追い出していたのを(やめて)、また(家に)もどしました。

※せぎよい=正月用の品物を買うこと。


[表示切替]
モバイル | | トップに戻る