みどりの中に光る絹の町川俣

米出し地蔵

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、あっとこに、じいさまとばあさまがあっだと。
山さ行ってかれっぽ取ったり、山菜採ったりしてな、細々と暮らしてだと。

あっとき、じいさまが町さかれっぽ売りさ行っで、
遅ぐけえってきたら、土手の下の方がら、
「うぶぁっちい。うぶぁっちい。」
って、言う声が聞えたんだと。
なんだべと思って耳すまして聞いてっど、やっぱり、
「うぶぁっちい。うぶあぁっちい。」
って聞えたど。

じいさまはおかしなこともあるもんだど、その声のする方さ行ってみだら、
地蔵さまが土さ半分いかってで、ほんじ、
「うぶぁっちい。、うぶぁっちい」って言ってるようなんで、
こんでは地蔵さま苦しがんべからって、やっこら、すっこら掘りおごして、
地蔵さまことうぶって途中まできたど。
ほしたどころが、ごいら背中が軽くなっちゃったんで、
見だら地蔵さまがいなくなっちまってだと。
「あれ、なんだや、地蔵さまがうぶぁっちい、うぶぁっちいって言うがら、
うぶってくっちゃのに、どこがさおっこどしてきたのがなあ。」
と思ったが、そのまんま家さけえって来ちまったど。

あくる日、じいさまは何ともおがしねえど思ってゆんべしなと同じ道行ってみたど。
すっと、道ばたにいづもは五つ立ってる地蔵さまが六つ並んで六地蔵になってだと。
「あれ、ゆんべしな、おらうぶってきた地蔵さま、こっちのはじさいだわい。
体半分、でろだらけになってござってる。
これは供養してやんねげなんねえ。」
ど思って、家さけえって、
「ばあさま、地蔵さまさ何かあげん物ねえが。」
って言ったら、
「なんにもねえが、まんまちっと残ってる。」
「ああ、ほんじぜえ、ほんじぜえ。」
って、残りまんま持ってっで地蔵さまあげで拝んだと。

ほして、町さ商いさ行ってもどって来てみだら、
地蔵さまさあげだまんまが、もりもりど白い米になってたど。
「あれ、誰か信心に米あげでったや。
このまんまおいだんでは、スズメに食わっちまうし、雨降っと悪ぐなっちゃうがら、
おれいただいでってまんま炊いで地蔵さまあげてやっペ。」
って、ほの米持って来てこうりゅうわけだがらって、ばあさまさ聞がしてな、
また次の日、まんま炊いで持ってで地蔵さまさあげたど。

ところが、商いのけえりに見っと、また、米になってたど。
スズメに食われっと、もってぇねえがらといただいて来て、
また、まんま炊いでお供えしてくっちゃど。
ほして、
「残りはいただきますべ。」
っていただいたんで、それからじいさまとばあさまは、
ひとっつも米の心ペえすっことなくなってな、
困ってる隣近所の人さも分げでやってたど。

ところが、隣さ欲ふけえじいさまとばあさまがいで、
「よし、おれがまんま上げる。」
って、隣のじいさまより先にまんま炊いで持ってっで、
地蔵さまさ上げでおいたど。
あどからぜえじいさまが行ったら、ちゃんとまんま供えてあったんで、
「誰か他に信心の人あって、おれのがな、いんねぐなったんだなあ。
そんじもやっさら持ってきたがら、わきの方さでも上げておくべ。」
って上げて行ったど。

隣の欲ふけえじいさまが行ってみだら、米になってたんで、
「これはしめだ。これがら米不自由しねな。」
と思って、持ってきたまんま炊いでみだらみんな砂になってたど。
何べん炊いでも、なべの中は砂になってたど。
ぜえじいさまがいただいてきて炊いでみっと、いつも白いまんまになってだという話だ。

川俣 佐藤 庄吉


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