みどりの中に光る絹の町川俣

正夢(あほな夫と嫁の話)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、むかしあっとこに、あほなおんつぁんがあったんだと。
何回見合いしても、嫁さくる人がながったつうんだな。
ところがない、正月の二日に紙で舟折って、
「今日の眠りの南風、波乗る舟の音のよきかな。」
って書いで、枕の下さいっち寝だら、
ぜえどころがら嫁っ子がきた夢見たんだと。
ほれがら何日が過ぎたら、夢が本当になって、
とってもぜえ嫁っこがそのおんつぁんのおがだになったんだと。
嫁っ子もらったんで、いづまでもおんつぁんまでそのぜえさいらんねぇんで、
そのぜえのてっペの古屋さ移っことになったんだと。
立派なぜえなんで何人も買い手がきても、夜中に化け物出るってんで、
買い手がなかったんだと。
すたら、あほなおんつぁんの嫁っこが、
「世の中に化げ物なんかねえがら、おれ行ってみっがら。」
って、夜中、そのぜえのまっ暗いどごさ入って、
長いキセルでスポーリ、スポーリタバコ吸って、
化け物出てくんの待ってたど。
ほしたらごでがない、
「ほら、化げ物出たら食われっちまうぞ。」
って、ガーダ、ガダ、ガダ、ガダ震えでとんぼ口さ立ってたど。

すっと、上段どっからカラッ、カラッと戸あげで、
ブリッコ、ブリッコって音たでながら、化け物が近寄っできて、
「エヘヘヘヘヘヘヘ。」
って笑ってんだって。
嫁っこが、
「なんでおめえ、こうやって毎晩このぜえさ化げで出んだ。」
って聞いだら、
「上段の下の大きなかめさ、金がいっペえはいって埋ってがら、
それ掘り起ごしてくれっこったは、化げで出ねえ。」
って言うんだと。
「ほんとがい。」
って聞いだら、
「ほんとに出ねがら。」
って言うんで、家さけえってひと眠りしてがら、早速そのぜえ買ったんだと。
ほして、上段の下を引っぱがして掘っだら、
ずないかめさ大判、小判がいっペえへえってたんだと。
ほうして、てえした金持つあまになっちゃったんだとさ。
ほだがら、あほな野郎だからって、あほにするもんでねえんだとな。

川俣 菅野 サノ


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