むかし、心がけの良いじいさまと、
欲の深いじいさまとが隣り合って住んでいました。
心がけの良いじいさまは、毎日、朝早くから夕方遅くまで、
畑に行って仕事をしていました。
ある日、用事をしに行った帰り、あたりは暗くなってくるし、
雨も降ってきて、家に帰れなくなったので、
途中の空家に泊まりました。
床の上では濡れるので天井のはりにあがって寝ました。
夜中になって、うるさくて目を覚ますと、
下に鬼たちが集まってばくちを打っていました。
じいさまは静かにして鬼たちが帰るのを待っていましたが、
いつまでたっても帰らないので、鬼たちを追い払ってやろうと、
むしろ(莚)でもあったのでしょう、それでバサ、バサと音をたてて、
「コケコッコー。」
と言って、一番鶏(とり)のまねをすると、鬼たちはびっくりして、
「やっ、たいへんだ。夜が明けてしまう。ほら、早く逃げろ。」
と、あわてて財布からさいころからそこいらにおいて、
逃げていってしまいました。
じいさまは、これは良い授かりものだと、家に持って帰えりました。
隣の欲の深いじいさまがそれを聞きつけて、
「どこから授かったのか。」
「実はな、これこれ、こういうわけだ。」
と言ったら、
「それじゃ、おらも行ってみよう。」
と、暗くならないうちから、
空家のはりの上にあがって鬼のくるのを待っていました。
案の定、鬼たちが集まって、ばくちを打ち始めました。
(欲の深い)じいさまは、あんまり早くから寝ていたものだから、
宵の口から目がさめてしまい、小便がしたくなったのと、
鬼たちの金に目がくらんでしまい、
むしろでバサ、バサとやって「コケコッコ-。」と、
力んで声を出したものだから、鬼たちの頭に小便をかけてしまいました。
鬼たちは、
「何だ。これ。星が出ている空から、雨が降るわけがない。
変なにおいだ。こりゃ、人間の小便だ。
この前とりの鳴き声のまねして、金を持っていったやつだろう。」
と、はりにあがっていって、じいさまをつかまえて、
持っていた鉄棒で殺してしまいました。
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