みどりの中に光る絹の町川俣
トップページ > 昔ばなし > 昔ばなし > 三枚のお札(五郎とばあさまに化けた古ダヌキの話) > 三枚のお札(五郎とばあさまに化けた古ダヌキの話)

三枚のお札(五郎とばあさまに化けた古ダヌキの話)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、あっとこにない、五郎ってあんちゃんがあったと。
その五郎がない、
「おばやんのぜえさ柿くっちこ。」
って言わっち、柿しょわせらっちずうっと行ったんだと。
ほしたら道さ迷っで、
一人のばあさまが井戸端で米といでっとこさ出っくわしたど。
すっと、ばあさまが、
「おめえ、どこさ行ぐだ。」
って言ったんだど。
「おばやんのぜぇさ柿持ってぐんだ。」
って言っだら、
「おれ、おめえのおばやんだぞ。」
って、言わっちゃもんだから、
「ほうでねえ。おらのおばやんは、なずき(額)さほくろがあっつぉい。」
って言ったんだと。
ほしたら、
「おれ、今日は豆ぶちじゃったがら、ごみたがって見えねんだ。
今こごで顔洗うがらな。」
って、井戸端でジャブ、ジャブ洗ってない、ほしてがらっとなづきさ、
ほくろを付けちまったんだと。
ほして、
「ほら、おめえのおばやんだぞ。」
って言わっち、ついで行ったんだと。
一晩泊るうぢに夜中にない、
ブリッコ、ブリッコって何が食ってる音すんだど。
こりゃてえへんだと思って、
「おばやん、何食ってんだ。」
って聞いたんだと。
すっと、
「にしゃにもらった柿食ってんだ。」
って、ブリッコ、ブリッコ食ってんだと。
てえへんだと思ってない、五郎が、
「しょんべん。しょんべん。」
って言ったんだと。
すっと、
「しょんべんは庭のすまさでもたれろ。」
って言って、まだブリッコ、ブリッコって食ってんだと。
「庭のすまさたっちゃんでは罰あだっから、早ぐ、早ぐ、しょんべんでんだ。」
って言ったら、帯さ鎖つけらっちゃんだど。
ほして、
「しょんべんちょさ行ってこ。」
ってやっちゃんだと。

五郎は行って神さまにない、お願いしたんだど。
「何だが気味わりいがら、どうがこの鎖解いでけろ。」
って、うんと神さまさお願いしだら、神さまが解いでくっち、
鎖を柱さゆっつげでくっちゃんだど。
ほしてお札三枚もらったど。
「もし追っかげらっちゃら、『大ばらもだ山になれ-』ってお札をまげよ。
その次は『大火の海になれ-』ってまげ。
その次は『大波になれ-』ってまげよ。」
って、おせらっちゃんだと。
五郎はずうっとはねできたんだと。
ばあさまは、
「早ぐこ-。早ぐこ-。」
って、ぜん力で鎖引っぱったんだってない。
ほしたら、しょんべんちょがとんぼぐちまできてない、
ガターンって引っかがってるわげだ。
ばあさまはこれはてえへんだ。
逃げらっちゃって、においかみ、かみはねで追っかげできたど。
五郎は今ちっとで食われそうになった時、神さまにもらったお札をない、
「大ばらもだ山になれ-。」
ってまいだら、山がばらもだ山になったんだど。
ガサ、ガサ、ガサ、ガサってない、こえできたんだど。
ほしてまた、つかまりそうになったんで、今度はない、
「大火の海になれ-。」
って、またお札をぶんなげたんだと。
ほしたら、火の海になってばあさまが火をかきわげ、はねできたんだと。
ほしてまた、つかまりそうになったんだと。
ほれがら今度は、
「大波になれ-。」
ってお札まいだら、波がジャプーン、ジャプーンってなってない、
そごんどこばあさま流れもしねで、やってきたんだど。
五郎はこわいべし、どうしたらぜえがなあど思って、
息つぎつぎちらっと見だら、高いどこさ寺あったんだと。
その寺さはねでったら、
和尚さんムニャ、ムニャと一所懸命お経読みしてたんだと。
「ばあさまに食われっから、こうりゅうわげだから、早く助けてくんちぇ。」
って頼んだら、
「今、一服お茶飲んで。」
なんて、のん気なんだと。
五郎はあわてでるわげよない。
「早ぐだ。和尚さん、早ぐ。早ぐ。」
ほしたら、寺のずない囲炉裏の上さ、
むかしはいもだのなんだのしみねえように、干してぐどこあってない、
そごんどごさはしご掛けで、かくしてもらったんだと。
そごんどごさ、ばあさま波こいでダラ、ダラになってきたんだとさ。
「さめぇ。さめぇ。あだらせてくんちぇ。おらえの息子こねがったかい。」
なんて言ってない、ほして、ブリブリ、ブリブリ木おっきて火たいたんだど。
ほしたら上で、
「あっつ、あっつ、あっつ。」
って言ったんだと。
「あっ、いだ。」
って、ばあさまはしごかがってだから、半分くれえまで登ってたんだと。
ほしたら、和尚さん一所懸命お経読んで拝んだもんだから、
はしごがおっきょれで、ばあさま下さべタッておぢっちまったんだと。
ほして、その死んだばあさまよぐ見っと、ずない古ダヌキだったんだと。

川俣 菅野 サノ


[表示切替]
モバイル | | トップに戻る