むかし、むかし、あるところに、あほな人がいました。
ご飯はたくさん食べるのだけれど、ぶらぶら遊んでばかりいました。
ある日のこと、気が向いて近くの神社に行ったそうです。
何か(お供え物が)あるかなと思って(神社に)入ってみたら、
何もお供え物がないので、頭が悪いくらいだから、
(御神体)の脇に行って大便をしたそうです。
そして、何も拭くものを持っていなかったので、
御神体の脇に捨ててあったへら(しゃもじ)で、ひょっとしりを拭きました。
そしたら、しりが鳴きだしました。
「トーピスカラピス、スッカラピース、スカスカギンナン、ハッカッコ。」
と鳴きだして、それがどうしても鳴いていました。
困ってしまいしりをつかんでもどうしても、鳴き続けて止まらないので、
(へらの)ご飯をよそう方でちょっとしりをこすったら、
ぴたっと止まってしまいました。
これはいいものを授かった。
あほだ、あほだと言われているから、
これでお金を稼ぐことができるぞと喜びました。
そうして、ある日の夕方、村一番の長者の風呂場に忍び込んで、
娘が風呂に入るときにちょっとへらで(娘のしりを)さわってやったら、
娘のしりが、
「トーピスカラピス、スッカラピース、スカスカギンナン、ハッカッコ。」
と、鳴き続けに鳴きだしました。
娘も湯に入ったものの、(しりが)鳴いてばかりいるので、
家に飛び戻ったら(家族)みんなもびっくりしてしまいました。
それから、お医者さまよ、神主さまよと、直してもらおうと頼んでも、
直りませんでした。
こういうしりの鳴き方は初めてだし、どうしてこんなに鳴くのかと、
娘もみんなも困ったことだと途方にくれていたとき、
あほだ、あほだと言われていた男が、きれいな布切れにへらをつつんで、
「しりが鳴くのを直すー。しりが鳴くのを直すー。」
と、(長者の家の)前の道を通ってきました。
(長者は)家の中でそれを聞きつけて、
「私のうちに来てください。」
と、呼び止められてその家に行きました。
娘の脇に座って、少し薬を飲まして、
きれいな布切れから見えないようにへらを出して、
ご飯をよそう方で(娘のしりを)ちょっとなでたら、
ぴたっと止まってしまいました。
「どういうことをして直した。何の薬を飲ませた。」
と聞かれたので、
「金けつよりえん丹という薬を飲ませた。」
と言いました。
(娘のしりも)直ったのでとても感謝され、
あほな男はお礼にたくさんのお金をもらって、家に帰ってきて、
新しく家を建てたりして、きれいな嫁ももらったそうです。
[表示切替]
| | トップに戻る