みどりの中に光る絹の町川俣

天人女房

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、松原ってどこで、一人の男が炭焼きやってたど。
ほしたら、ある日の夕方、天人たちが水浴びさやってきたんだと。
えしょを松の枝さかけて、ほして、水浴びでるうぢに炭焼ぐ男がな、
ほのえしょはぜええしょだがら、かぐしておけば天さ昇って行がんねえがら、
ひとづかくしておくべって、一人のがなをかくしちゃったんだと。

天人たちは水浴びで、キャッ、キャッ、キャッさわいでない、楽しく遊んで、
ほして、えしょを着っ気になっだら、一人のえしょがねえんだって。
みんなは着てない、天さ昇って行っちまったど。
一人の天人は昇って行がんなくて、シク、シク、泣いてたんだと。
ほして、しめえに炭焼ぐ男のおがだになっちまったんだど。

ほして、二年、三年してるうぢに、男のわらしができたんだってな。
天人はわらしにな、
「ちゃん、かぎちょうだい。かぎちょうだい。」
って言わせたんだと。
炭焼ぐ男はあんましわらしにせがまっちない、
かぎをあずけちゃったんだど。長持ちのかぎをない。
ほしたら、天人が長持ちさかぐしておいだえしょめっけて、
着て天さ行ぐどき、わらしを天神さまさない、捨てでったんだと。
ほして、わらしに、
「どっから生まっちゃって、聞かっちゃら、
木の根っこから生まっちゃって言えよ。」
って、おせえで行っちまったど。

ほしてるうぢに、天神さまのお祭りがきたんだと。
近所のわらしがまりつきしてるうぢに、
ちょうど天神さまの後ろさ捨てでったわらしんどこさ、
まりがポーンと転げていっちゃったんだと。
あけえ-えしょ着てるもんだから、拾わんねべ。
わらしらはがおったなあなんて騒いでるうぢに、
やぶの中からポーンとけえってきたど。
「だれかいっぞ。」
って行ってみっと、天人のわらしだったんだと。
「おめえはどこのわらしだ。」
って聞いだら、
「おら、どこのわらしでもねえ。」
「どつからきた。」
って聞いても、言わねんだって、ほして、
「おら、木の根っこがら生まっちゃんだ。」
ってばっかし言って、おせぇらっちゃどおりしか言わなかったど。
ざっと、昔はさ-がえだ。

川俣 菅野 サノ


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