むかし、あっとこに、親孝行な息子があったど。
昔は六十になっと殿さまの言いづけで、
山さ捨てでこなくちゃなんねがったげんじも、
どうしても山ん中さ捨ててこらんにゃがったど。
ほんでも、お上の言いづけなんで、なんともしょねぇぐて、
うぶってって捨ててけえる気になったど。
すっと、ばあさまが、
「道が遠いがら道まちがえっとてえへんだがら、
おら来る途中両側の杖折って来だがら、
木の折れだ枝探しで行げばけえられっがら。」
って言わっち、息子はなじょんしてもばあさま捨てらんにゃぐなって、
うぶってけえって来てないしょに、ぜえの縁の下さ室作ってしまっておいだど。
ほしていたどころ、
殿さまんとごさ隣の国の殿さまんどごがら難題吹きつけらっち、
この問題解げねえこっちゃ国寄ごせといわっちゃつうんだな。
殿さまもがおっちゃったど。
ほんでも、誰も家来に知ってるやつねえもんだがら、国中さ布令まわしだどごろが、
息子が聞いできてばあさまにこう、こう、こういう話だって語って聞かせだど。
すっと、ばあさまはほだごとわげねえっておせえでくっちゃど。
ほれは木目がら正目がらどっちともつかねえ木持っできて、
どつちが本だが裏だが見分げでよこせって、隣の殿さま言ってきたど。
ばあさまは、
「ほだごとなにも面倒でねえわ。水さひたしてみっと本の方はいく分沈むもんだ。」
っ言ったど。
息子は行っで殿さまさ話すと、
「なるほど、ほんじゃ分った。」
って言ったど。
ほんでぜえがど思っだら、今一ペん問題よこしたど。
ほれはアリは一間のうち、何どきの速さで歩ぐが返事よこせっていわっちゃど。
そだげんじょも、わがんねえつうな、アリは。
歩がせてみっと一っペんになんが、まっすぐに歩がねつうがら。
息子はけえっできてばあさまにゆっだら、ばあさまほだごとめんどうなことねえって、
「一間のがな、かな糸張っておいで、
こっちのはしさ何か甘いもの一つおいで、こっちのはしがらアリはわせっど、
一生懸命こいつのにおいするがんで甘いどこさ行っがら、
そんで何どきの速さで歩ぐが分っがら。」
って言ったど。
ほんで息子がまた行っでおせえだら、ほの通りだったど。
二つで間に合うど思っだら三つめよこしたど。
ほの三つめは、あぐの縄、
なべのうえでもじった縄そっくりもやすとあぐの縄あっがらと教えてくっちゃど。
息子がこの三つといだもんだがら、殿さまがおめえこういうがな、
自分の考えがら出だのがと言わっちゃがら、
正直に実はこういうわげで殿さまのお布令破っで、
おっかさまごど縁の下しまっておいだ。
これはおっかさまがいって聞かせたんだと語ったど。
ほしたら、どんなほうびでもくれっからと殿さまがいったつうがら、
ほがのほうびいんねえがら、どうぞおっかさまの命助けてもらえでと言ったど。
ほんだがら、年寄りはてえせつにしなくちゃなんねえって、
ほれがらうば捨て山はなくなったんだど。
川俣 佐藤 庄吉
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