むかし、お城の庭番が庭掃除をしていたとき、
粟が一本生えていたのでつっかい棒をして倒れないようにしておいたら、
大きな穂を実らせました。
すると、殿さまが、「これはなんと言うものだ。」と聞いたので、
「これは百姓が作る粟と言うものです。」と庭番が答えると、
「だいぶ実っているな、これはどのくらい取れる。」と聞かれたので、
「へい、これは一升まけば二升は取れます。」と(収穫量を少なく)答えました。
そして、さんまが旬のころさんまを焼いて(殿さまに)出すと、
「うまいから食べてしまったので今一匹持ってこい。」と言われましたが、
その一匹しかありませんでした。
それで、(お膳を)持ってきて殿さまの食べたさんまをひっくり返してみたら、
片方はそのままありました。
(殿さまは、)骨から上ばかりしか食べていませんでした。
また、殿さまは魚つりが大好きな人だったので、
川崎のおおくま川(※)に来て魚をとって、
すべって転んで川に入ってしまいました。
それで、川上の家のところに来て火にあたらせてくれと火にあたりました。
そしたら殿さまを大切にして、
こうぞの樹皮(和紙の原料)を燃やして火をたきました、もったいない。
すると、(殿さまは)「百姓というものはぜいたくだ。
木にかんなをかけて火を燃やしているから。」と言ったそうです。
殿さまはそのように馬鹿でした。
ある日、川崎の百姓が、大根を持ってきてくれました。
「大きな大根。これはよい大根だ。
何をこやしにした。」と(殿さまに)聞かれたので、
「下肥をこやしにしました。」と言いました。
夜、(貰った大根を)大根おろしにして(殿さまに)食べさせたら、
そうしたら、(殿さまは、)「これに下肥をかけてこい。」と言いました。
※おおくま川=阿武隈川のこと
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