むかし、じいさまとばあさまがあったど。
じいさまが犬つっち山さ行ぐと犬に、
「こご掘れ、ワンワン。こご掘れ、ワンワン。」
って言わっち、やがましいと思ったげんちょも掘ってみだら、
大判、小判がザックザック出てきたんだと。
じいさまは喜んで持ってけえって、ばあさまさおせで、
「これはてえした宝物だ。」
って、広げて見てだら隣の欲たかりじいさまがきて、
「おめえぜえでどうゆうわけで、こんなに金授がっだ。」
「犬つっち山さ行っだら、『こご掘れ、こご掘れ』って言うがら、
掘っちゃぐったらこんなにたくさん黄金が出だ。」
「ほんだら、おらさほの犬貸っせ。」
「やんだ。」
って言ったげんちょも、聞かねえでつっち行っちまったど。
山さ行ってこご掘れども何とも言わねがな、掘っちゃぐったんだと。
ほしたら汚ねえものばっかり出で、はあ、
欲たかりじいさま、ごせやいちまって、
犬ごとぶっ殺しちまっていげちまったど。
犬貸したじいさまが、
「けえしてけろ。」
って言ったら、
「とんでもねえ話だ。犬におせえらっち掘っちゃぐったら、
汚ねえものばっかし出だがら、ぶっ殺していげちまっだ。」
「なにが、しるし植えでくっちゃか。」
「なにも植えねえ。」
って言うんで、やさしいじいさまは、犬の墓にとマツの木植えてくっちゃんだと。
ほしたら、マツの木がだんだんずなぐなって、
あまりずなぐなったもんで、切って犬の形見にうすをこさったんだと。
ほして、餅ついだらじいさまのめえさザック、ザック、
ばあさまのめえさザック、ザックと、大判、小判が出たんだとさ。
ほしたら、また欲たかりじいさまがきて、
「こっちじゃ、なんでしこたま黄金あんだ。」
「いや、おらえの犬がぶち殺さっちゃどこさ、マツの木植えどったら、
あんまりずなぐなっちまったがら切ってうすこしゃって、餅ついだら黄金出だんだ。」
「ほんじゃ、おらにそのうす貸してけろ。」
「とんでもねえ。おめえなんどに貸さんに。」
って言ったげんちょも、ろぐでなしじいさまだがら、ごいら持ってっで餅ついだんだと。
ほしたら、じいさまのめえさビダ、ビダ、
ばあさまのめえさビダ、ビダど、汚ねえものばっかし出だんだど。
じいさまごせやいでうすつん燃しちまったど。
ぜえじいさまそのあぐ持ってけえってくっと、
そのあぐ風でちっと吹っ飛んで、枯れ木さかがって花咲いたんだと。
こわはぜえもんだと思って、枯れ木さ花咲かせてみっペと、
ずないサクラの木さ上ってだどごろが、殿さまが通りかがったんだと。
「そこにいるじじい、なにじじいだ。」
「枯れ木に花を咲かせるじじいだ。」
「一枝咲がせてみろ。」て殿さまにいわっち、
「一振り振れば、つーぼんだー。
二振り振れば、ひーらいだー。
三振り振れば、つーぼんだ。」
ってあぐまいだら、そのとおりになって、えらいご褒美くれらっちゃど。
ほしたら、また欲たかりじいさまがきて、
「なんだ、こっちではてえしたもんだ。」
「いや、おめえにうす貸しだら、つん燃さっちゃが、
そのあぐ持っでって、一振り、二振り、三振りまいで、
花咲がせで殿さまにご褒美もらったんだ。」
「おれにもそのあぐくれろ。」
って持っでっで、ほして木さ登ってだら、殿さまが通って、
「そごにいるじじい、なにじじいだ。」
「枯れ木に花を咲がせるじじいだ。」
「そんなら咲がせてみろ。」
ところが、花咲かせっペど思ったどころが、
あくが殿さまがら、家来がらのまなぐさへえって、
とうとうわりいじいさまはしばられっちまったんだとさ。
東福沢 菅野 えみ
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