みどりの中に光る絹の町川俣
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へっぴり嫁(部屋の由来の話)(1)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、ある村に気立のぜえ娘があったんだと。
一つ人に言わんに癖があんがなで、縁が遠くなってだところが、
隣村がら話あって、うまぐまどまって嫁入りしたんだと。

ご祝儀も終っていく日か過ぎた頃、
何か心ペいでもあんのが青い顔してんで、
しゅうとめとむこさまが聞いだどころが、
「おら病気どもつかねえ大きな“へ”たれる癖あんだ。」
「“へ”ぐれのがんで心ペいしてっこどねえがら、思いきりたれろ。」
「ほんじぜえごったらたれるが、危ねがらおっかあさんも、
おめえさんも庭の臼さつかまってでくんつぇ。」
って言うんで、つかまってだら、しりまぐってボーンとやらがしたど。
ほしたら、むこさまは天井のはりの上さ吹っ飛ばさっち、
おっかあさんは臼ぐちらけたの上さ吹っ飛ばさっちゃど。
「こんではとても命まで取られちまうがら、こんな嫁はおがれねえ。
おめえ里さ送ってげ。」
って言わっち、むこさまは仕方なく送ってっだど。
途中までくっと、馬さ反物つけで商いさ来てだ奴らが、
のどかわいで道ばたの梨の木めっけで取っペとしてだが、
とどがなくて困ってたど。
嫁っこはそれ見でて、
「なんだ。こらぐらえなごど、こだ梨、おら“へ”で落どしてみせる。」
「人、ばかにすんな。“へ”たっちゃぐれで、この梨落じるはずあっか。
落どしだら馬ごどこの反物みなくれる。」
「よし、ほんだら見でろ。危ねえがら、おめえだぢ梨の木がらはなっちろ。」
って、しりまぐってボーンとやったどころが、
梨も木の葉も落じて裸になっちまったんだと。
ほんじ約束だがら、馬がら反物がらそっくり貰っちまったど。
ほれ見でむこさまは、こういう宝嫁はけえさんねど思って、
「いっしょに戻ってけろ。」
って、つれでけえって、おっかあさんに、
「これ、これ、こういうわげだ。」
って話したら、
「そんな宝嫁なら長ぐいでけろ。
しかし、あの手で“へ”やらっち、
いつも屋根の上さなんて吹っ飛ばさっちゃ困っから、
奥の方さ一間(ひとま)造ってやっから、そごさ行って思うぞんぶんたれろ。」
って言ったど。
ほれがへ屋(部屋)の始まりだつうんだな。

川俣 佐藤 庄吉


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