むかし、あっとこのじいさまが、
やきめし作ってもらって山仕事さ出がけたど。
途中でボロ、ボロのえしょ着だ女のほえどが苦しんでたど。
じいさまは知らんぷりして通っちまったが、
かわいそうに思ってもどったんだべ。
聞いてみっと腹へっで苦しくて動かねがったんど。
じいさまは持っでたやきめし全部くっちやっちまったど。
ほえどはなみだ流して喜んで、
「なんにもお礼すんものねえが、こんなもんでぜえがったら持ってっでくなんしょ。」
って、一握りのもぐさをくっちよこしたど。
「なんにもいんねえ。」
って、じいさまは言ったんだが、
やっさら、くっちよこしたもんだがらって貰っで山さ行ったど。
じいさまはやきめしくっちゃもんだがら、なんも食わねえで仕事してだと。
夕方けえってくっ時は、フラ、フラして遅ぐなってまっ暗になっちまったど。
とうとう道さ迷ってけえらんなくなっちまってな、
見づけたごろさへえって明るくなるまで野宿すっことにしたど。
すっと奥がらオオカミのようなきびわりいうなり声が聞こえできで、
じいさまはおっがなくなってきだが、オオカミは火がきれえだってごと思い出して、
腰から火打道具ともぐさ出して火つけたど。
ほんでもちっとばっかしのもぐさすぐ無くなっちまったど。
心細くなっちまったが、ほんどき、今朝ほえどがらよこさっちゃもぐさ思い出し、
ほれを夜明けしなまで燃してたど。
ほんで、オオカミはかかってこなかったど。
夜が明けたんでじいさまは、ほこから逃げてやっとこさぜえさけえってきたど。
火が燃えでっがらオオカミは追っかげでもこらんにゃかったんだべ。
川俣 佐藤 庄吉
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