むかし、キツネが山のくぼ地の日当たりのよいところで、
昼寝をしていました。
そこに、法印(山伏)さまが通りかかって、
「キツネ、びっくりさせてやろう。」と思って、
キツネの耳にほら貝をあてて、ボホーッ、ボホーッと鳴らしたら、
キツネの野郎は、びっくりして飛び上がって逃げていきました。
「いやぁ、おもしろかった。」
と(法印さまは)喜んで、また、看経(※)しながら歩いていきました。
キツネは腹を立てて、法印の奴、また、帰りにはここを通るだろうから、
今度はこっちがばかにしてやろうと思い、案の定戻って来たので、
山だったところを川にしてしまいました。
法印さまはおかしいなと思いましたが、
細い橋があったのであわてて渡りました。
すると、それは細い木で、法印さまは木の先の梢まで上がって、
一晩そこで騒いでいたそうです。
朝になって草刈りに行った人が、
「おーい、法印さま、そこで何をしてる。」
「いや、橋を渡ってここまで来たが、行くところがない。」
と、一番上の梢まで登ってしまって、騒いでいました。
※看経=経を読むこと。
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