むかし、むかし、ある坊さまが行脚の途中で、
貧しいさびれた村に通りかかりました。
村の人たちはみんな顔色が悪く元気がありませんでした。
坊さまは村の人たちを助けてやろうと思って、
誰もいない破れ寺に住みつくことにしました。
いろいろ考えて、村の人に信仰心と働く気を起こさせねばならないと、
あることを考えつきました。
坊さまは道端にあった泥だらけの古い石の地蔵さまを見つけて、
ある場所に穴を掘って底に村の人からもらった大豆をたくさん入れて、
その上に地蔵さまをのせて土をかぶせておきました。
入梅の節が近づいた頃、坊さまは村の人を集めて、
「毎晩、休んでから夢の中に石の地蔵さまが出てきて、
長い間土の中に埋められていたが、やっと表に出られるようになった。
寺の西の方で頭持ち上げて出てくるから、お堂を作って供養してくれ。
そして、一生懸命信仰すれば暮らしも良いようになって、
村も栄えるってお告げがあった。」
と、聞かせました。
入梅になって何日かたった時、
埋めた場所が地割れして石の地蔵さまの頭が出てきました。
村の人は坊さまの夢は正夢だったとびっくりして、
早速お堂を建てて供養し、坊さまを尊敬しました。
村人は坊さまからみ仏の教えと、働くことの大事なことを聞かせられて、
何年もたたないうちに村は栄え、暮らしも良くなりました。
石の地蔵さまは大豆が雨でふくれて、待ち上げられたのだけれども、
ほんとに利口な坊さまでした。
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