むかし、あるところに、じいさまとばあさまが住んでいました。
山に行って枯れ木を取ったり、山菜を採ったりして細々とと暮らしていました。
あるとき、じいさまが町に枯れ木を売りに行って、
遅く帰ってきたら、土手の下の方から、
「おんぶしてください。おんぶしてください。」
と言う声が聞えました。
なんだろうと思って耳を澄ませて聞いていると、やはり、
「おんぶしてください。おんぶしてください。」
と聞えました。
じいさまは変なこともあるなと、その声のする方へ行ってみたら、
地蔵さまが土に半分埋まっていて、それで、
「おんぶしてください。おんぶしてください。」と言っているようなので、
これでは地蔵さまも苦しいだろうからと、どうにか、こうにか掘りおこして、
地蔵さまを背負って(家に帰る)途中まできました。
そうしたところが、急に背中が軽くなったので、
(背中を)見たら地蔵さまがいなくなってしまいました。
「あれ、なんだろう、地蔵さまがおんぶしてください、おんぶしてくださいと言うから、
おんぶしてあげたのに、どこかに落としてきたのかな。」
と思ったのですが、そのまま家に帰ってきてしまいました。
あくる日、じいさまは何とも不思議だなと思って夕べと同じ道を行ってみました。
すると、道ばたにいつもは五つ立っている地蔵さまが六つ並んで六地蔵になっていました。
「あれ、夕べに、わたしがおんぶしてきた地蔵さま、こっちのはじにいるじゃないか。
体半分、泥だらけになっていらっしゃる。
これは供養してやらなければならないな。」
と思って、家に帰って、
「ばあさま、地蔵さまに何かお供えするものはないか。」
と言ったら、
「なにもないが、ご飯が少し残っている。」
「ああ、それでいい、それでいい。」
と、残りご飯を持っていって地蔵さまにお供えして拝みました。
そうして、町に商売に行ってもどって来てみたら、
地蔵さまにお供えした(少しの)ご飯が、大盛りの白いお米になっていました。
「あれ、誰か信心にお米をお供えしていったな。
このままおいておいたのでは、スズメに食べられてしまうし、
雨が降ると(お米が)腐ってしまうから、わたしが(お米を)いただいていって、
ご飯を炊いて地蔵さまにお供えしてあげよう。」
と、そのお米を持って帰って、こういうわけだからと、ばあさまに聞かせて、
また次の日、ご飯を炊いて持っていって地蔵さまにお供えしました。
ところが、商売の帰りに(地蔵さまにお供えしたご飯を)見ると、また、(白い)米になっていました。
スズメに食べられると、もったいないからといただいて来て、また、ご飯を炊いてお供えしました。
そうして、
「残りはいただきましょう。」
といただいたので、それからじいさまとばあさまは、
ひとつもお米の心配をすることがなくなり、困っている隣近所の人にも分けてやりました。
ところが、隣に欲が深いじいさまとばあさまが住んでいて、
「(その話を聞いて)よし、わたしがご飯をお供えしよう。」
と、隣の良いじいさまより先にご飯を炊いて持っていって、地蔵さまにお供えしておきました。
あとから良いじいさまが(お供えに)行ったら、ちゃんとご飯がお供えしてあったので、
「誰か信心な人がいて、私の持ってきたもの(ご飯)、いらなくなったな。
それでもせっかく持ってきたのだから、わきの方にでもお供えしていこう。」
とお供えしていきました。
隣の欲の深いじいさまが(お地蔵さまのところへ)行ってみたら、
(お供えしたご飯が)お米になっていたので、
「これはうまくいった。これからはお米に不自由しないな。」
と思って、持って帰ってきた(お米で)ご飯を炊いてみたら、みんな砂になっていました。
(地蔵さまにご飯をお供えして持ってきたお米を)何べん炊いても、なべの中は砂になっていました。
良いじいさまがいただいてきたお米を炊いてみると、いつも白いご飯になっていたと言う話です。
[表示切替]
| | トップに戻る