むかし、むかしあるところに、あほなおじさんがいました。
何回見合いしても、嫁にくる人がなかったと言うことです。
ところが、正月の二日に紙で船を折って、
「今日の眠りの南風、波乗る船の音のよきかな。」
と書いて、枕の下に入れて眠ったら、
良い家から嫁が来た夢を見たそうです。
それから何日か過ぎたら、夢が本当になって、
とっても良い嫁がそのおじさんの奥さんになったそうです。
嫁をもらったので、いつまでもおじさんまで一緒にその家に居られないので、
その家がある並びの一番上の古屋に移ることになりました。
立派な家なので何人もの買い手が来ても、夜中に化け物が出るというので、
買い手がなかったそうです。
そしたら、あほなおじさんの嫁が、
「世の中に化け物なんかいないから、私が行ってみましょう。」
と、夜中、その家の真っ暗なところに入って、
長いキセルでスポーリ、スポーリタバコを吸って、
化け物が出てくるのを待っていました。
そしたら夫が、
「ほら、化け物が出たら食われてしまうぞ。」
と、ガータ、ガタ、ガタ、ガタ震えて入口に立っていました。
すると、床の間の方からカラッ、カラッと戸を開けて、
ブリッコ、ブリッコと音をさせながら、化け物が近寄ってきて、
「エヘヘヘヘヘヘヘ。」
と笑ったそうです。
嫁が、
「なぜおまえは、こうやって毎晩この家に化けて出るのか。」
と聞いたら、
「床の間の下の大きなかめに、金がたくさん入って埋まっているから、
それを掘り起こしてくれるならば、化けて出ない。」
と言いました。
「ほんとかい。」
嫁が聞いたら、
「ほんとに出ないから。」
と化け物が言うので、家に帰って一眠りしてから、早速その家を買いました。
そして、床の間の下をはがして掘ったら、
大きなかめに大判、小判がいっぱい入っていました。
そうして、大変にお金持ちの女性になりましたとさ。
ですから、あほな野郎だからと言って、ばかにするものではありませんよ。
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