むかし、女神山さちっとあほなわけえもんがあったんだと。
嫁こもらっで正月に、
「ご年始さ行ってこ。」
って言わっち、嫁このぜえさ行っだら、
ペターン、ペターンって餅つきやってたど。
ほしたら、わらしらが寄っできてあぶねえもんだがら、
「おっかねぞ。おっかねぞ。」
って言ってついでだど。
わけえもんはほんとにおっかねんだと思ってない、
たまげで見でだんだと。
つき終ってがら、丸めであんこさ入っちない、
おっかぁさまに出さっちゃんだと。
おっかねもんだと思っでがら、じいっと見でばがりいだんだと。
みんなペロペロ、ペロペロうまそうに食ってんだげんちも、
わけえもんはおっかねって教せらっちゃがら、
うんとおっかねもんだど思って、
「せなさま、せなさま、いっペえあがらっせ。」
って言わっちも、食べねでみんな座布団の下さあげちまっだど。
ほして、土産に重箱さない、丸め餅十三入っち風呂敷さ包んでもらっで、
けえってきたんだと。
ずうっと来るうぢに棒あったんで、おっかね餅だと思っでがら、
棒の先さ風呂敷包みの先さひっかげで、ヒョッコ、ヒョッコって来だら、
ドサーンと風呂敷とげで落ぢちまったど。
重箱のふたがあがって、中の白い丸め餅ガシャガシャになっちゃったど。
ほれ見で、
「白い歯向げで、おらさかかる気が。」
って、かついでだ棒持っで、
餅ごとペタペタ、ペタペタ、ペタペタとただいちゃっで、
でろだらけにしちまったど。
川俣 菅野 サノ
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