みどりの中に光る絹の町川俣

長い名の子(名前が長い兄の話)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、あっとこに、兄弟があっでな。
せなの方は、
「扇拍子(びょうし)をちょっと打って、ちょうぎちょうぎ長六に、
長太郎びくに長びくに、あの山のこの山の、ああ申すこう申す、
はっきりど縁切りもくあみに、てんもくもくのもくぞう坊、
伊賀の平左衛門加賀の源蔵次、源七源八源年六、
とっペない五郎、うりのおん坊とうがん坊、豆腐のおん坊食いしん坊、
刀の鐺(とう、刀のこじり)の小左衛門、鳥の鶏冠(けいかん)の藤三郎」
という長い名まえで、
しゃでの方は「問うてなんしょ」という短い名まえだったんだと。

おどつぁんはせなの方があんまりめごくねえがら、
出世しねようにと面倒くさい名まえをつけ、
しゃでの方はめごいがら、短ぐで呼びやすい名まえつけだわげだ。

ほして、二人ともずなぐなって、殿さまさお目どおりすっことになったんだと。
殿さまのめえで、
「せなの方から名まえを申してみよ。」
って言わっち、
「へい、おらはこうこう、こういう者でごぜえます。」
って、長い名まえを申し上げだら、
「ほう、なるほど、なげえおもせー名まえだな。」
って、おほめの言葉をいだだいで、ご褒美をもらったんだと。
ほれがら、しゃでさ、
「そちは何と申す。」
「はい、問うてなんしょと申します。」
って言ったら、
「問うてなんしょ。聞いでなんしょどは何事だ。無礼者さがれ。」
って、てえへんごしゃがっちゃんだとさ。

小神 安斎 正治


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