みどりの中に光る絹の町川俣

二十三夜の花嫁

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、むかし、あっとこに仲のぜえ兄弟があったど。
せなはめっこでびっこ、しゃでは村一番のぜえ男だったど。
しゃではりごで男ぷりもぜえもんだから、ご指南さまがくるげんじも、
せなんどこさは誰もきてくんにゃがったど。
せな思いのしゃでは、
せなが嫁っこ貰わねうじは絶対持だねえって断わっていだんだと。
ところがごえらしゃでが嫁取っことになっで、
村の人はおったまげちゃったど。
ほれも隣り村の小町娘だつぅんだな、
ほして、正月の二十三夜の日に、ご祝儀すっことになったんだと。

三、三、九度の盃もすんで、いざ、床入れとなっだら、花むこが、
「ちょっくら、しょんべんたっちくっから。」
って、でていってな、めっこびっこのせなの手引いで、
花嫁の床さもぐらせちゃったど。
しゃでは素早く花嫁がぬいだ白むく着ちゃっで、サーッとから紙あげで、
「夢々、疑うことながれ。われこそはとうとい二十三夜さまなるぞ。
二十三夜にもかかわらず、夫婦の契りを結ぶとは、
どつちかめっこかびっこにしてやっつぉ-。夢々疑うことなかれ。」
ってやったわげだ。
さあ、布団の中で嫁っこ困っちまったど。
「おらとおめえさんは、今晩夫婦の契り結ばなきゃなんねえが、
めっこかびっこになったら、おめえさん、おらこと見捨てっペか。」
「おらほだごとねえ。
おらがもしめっこかびっこになっだら、
おめえごそおらどこ見捨ててなんねぞ。」
って話しながら、夫婦の契り結んじまったわけだ。
昨日まであれほど立派だった花むこが、
めっこでびっこになっちまってぶったまげちゃったど。
嫁っこもあきらめで一生そうてな、夫婦仲よく、
あんちゃもしゃでも仲よくしで暮したど。

ほれがらは、正月二十三日にゃ、朝がらじょ-り作りしで、
二十三足作んのに子の刻までかかるがな。
ほして、二十三夜さま拝んで家の安泰祈願したもんだと。

秋山 八巻 俊一


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