みどりの中に光る絹の町川俣
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おへこばあさんの江戸見物(せっかちばあさんの話)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし語って聞かせっかんな。
今ど違ってむかしは乗り物なんかながったがら、
殿様のような人はかごさ乗っていっだが、
てえげえの人は江戸見物さ行ぐだって、歩ぐほがねがったんだと。
あっとこのじいさまどおへこばあさま(※)が、
江戸見物楽しみに一生懸命かせえで金ためで、
いよいよ江戸見物するごどになったんだど。
「さあ、ばあさんや。仕度しろよ。おらのふんどしどこさおいだ。」
「なに、ふんどし、あんまり臭ぐしておっから、そんじゃなんめど思って、
コチリ、ムチリコ、コチリ、ムチリコって洗っで、
でえ(大)神宮さまさ上げ申しておぎました。」
「このくさればばあ。
でえ神宮さまに上げ申しだら、死に罰あだっちまうべ。
おらのじょーりどこさおいだ。」
「じょーりだって、あんまりごじゃ、ごじゃ汚しておっから、
いや、いや、なんねえど思っで、これもモチリ、モチリ洗っで、
はしごさぎっちり縛っておぎ申した。」
「早ぐ持ってこお。」

ほんで、やっと出がげだわけだ。
「ばあさん、ばあさん、早くやべ。」
「じいさん、待ってけろ。
縞のせぁえふ落っこじでだから、めっけてふところさ入っちゃら、
モチリ、モチリとへそかいんで、なんともしゃねえ。見でくんつぇ。」
「どれ、どれ、縞のせぁえふ、ほだにへそかぐはずねえ。」
って見っと、せぁえふでなぐひきげぇーるだったど。
「こんなもんせえでおがねで、投げらっせ。」
「いや、いや、やっさらめっけたもん、いだましな。バイ。」
って投げだと。
「さあ、早ぐ行がねど暮れっちまうから、急いでいんべえ。」
「じいさん、じいさん、まんじゅう落ちてだ。」
「どれ、見せらっせ。なんだ、これ、まんじゅうでなぐ馬ぐそだ。
きたねえ。投げらっせ。」
「あんまりほかほかしてっから、まんじゅうだと思ったや。
いだましいな。バイ。」
って、また投げだと。

こうしてやっと江戸さ着いで夕方になったら、ドカーンと花火が上ったど。
「じいさん、じいさん、なんだべや。わせ物して、あれ、戻ってくるよ。」
「ばあさん、ばあさん、なに語ってんだ。
あれは戻ってくんじゃなぐ、残月っていうもんだ。」
って言ったど。

※おへこばあさま=せっかちなばあさま

大綱木 管野 照雄


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