みどりの中に光る絹の町川俣

誘いの歌(南山のばかむこの話)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

南山のばかむこが嫁っこもらったが、
嫁っこは待ちかねでだんだべ。
「舟は浜ばにあれども、乗りもせず。」
って、毎晩寝さえすっと語んだってない。
ばかむこはぜえのかみさ、おんつぁまあっから
「おんつぁん、おんつぁん、
おらえのおっかあ狂ったんだがなんだが、寝さえすっと、
「舟は浜ばにあれども、乗りもせず。」って、寝言語ってしょねえ。」
「ほうが。晩に言ったらな、
「まだ荒波なれば、乗るに乗られん。」って言え。」
「へい。」
って、ばかむこだがら一づおほえで待ちがねでだど。
ほしたどころが言わっちゃつうがら、
「まだ荒波なれば、乗るに乗られん。」
って言ったど。
すっとおがだが、
「神の仰せか、仏の仰せか。」
って言ったら、
「神の仰せや、仏の仰せでねえが、かみのおんつぁま、かみのおんつぁま。」
って言ったんだとさ。

飯坂 本田 貞


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