むかし、下手渡に嘘つきの名人がいました。
「おまえ嘘つき上手だが、なんで上手なんだ。
なにか嘘の本でも見て、嘘をつくのかい。」
と(ある人が)聞いたら、
「嘘にほん(本当)があるか。」
と言いました。
あるとき、田仕事の一服休みで、みんなが休んでいたら、
しもの方からその嘘つきがやってきました。
(休んでいる人たちが)ひとつからかってやろうと思い、
「今日は嘘つかないのかい。」
と言ったら、
「嘘どころじゃない。
おまえのおっかあが倒れて、
前野さまに(診察してもらうよう)頼みに行くところだ。」
と、急いで、テコ、テコ走って行ったので、
あわてて仕事を切り上げて家に帰ってみたら、
おっかあはピン、ピンして仕事をしていたので、
「また、やられた。」
と言ったとさ。
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