信夫山はお山と言ってるがない、
むかし、お山のごんぼギツネど、
なんていう山だが忘っちゃが、その山のキツネとが、
「金持ちばかにして、金取って酒でも飲むべ。」
と相談したんだと。
お山のキツネの方がかしけえかったんだべ。
人さ化げで別なキツネが馬になったど。
ほして、
「馬買ってけろ。」
って、ある金持ちのぜえさ行ったど。
馬買うどきは歩がせで歩きぶり見だり、姿、格好見で買うわけだ。
そのぜえのだんぽが後ろ足がどうだ、こうだって言えば、
化げでんだがらそのとおりに直すし、
首の振り方がどうだって言えば首も直すし、
立派な馬になっちまったわげだ。
だんぽは喜んで言い値どおり買ってくっちゃど。
お山のごんぼギツネはいっペえ金もらって、
わがばかり飲んだり食ったりしちまったど。
馬に化げだキツネはすぐ逃げられっと思っだが、
厳重に馬屋さかこわっちゃもんだがら逃げらんにゃかったど。
そのうぢ馬屋から引ばり出さっち、体や足を洗らってもらってるうぢに、
やっと逃げでお山のキツネのどこさ行ったど。
分けめえくんつぇって言っても、
飲み食いしちゃったもんだがらもらわんにゃかったど。
よし、見でろ。
今に敵(かたき)取ってくれっからど、ほんどぎはけえってきたど。
寒い冬のある日、川でいっぱい魚取って食ってたどこさ、
お山のごんぼギツネがやってきて、
「おらさも分げでけろ。」
「いや、だめだ。阿武隈川さ行けば、なんぼでも取れる。
よあけしなに行って、川さしりっぼ浸しでじっとこれえてれば、
なんぼでもかかってくっつお。」
っていったど。
お山のキツネは本気になっで、よあけしな、阿武隈川さ行ってしりっぼ浸してたど。
かんかんどいう寒い日だったがら、しみちゃってしりっぼ抜げなくなっちまったど。
そのうぢに夜が明けて、村の人だぢも仕事さでがげてくるもんだがら、
あわてでむりやり引っぱったら、しりっぼポッツリ切れちまったど。
ほんじゃがら、お山のごんぼギツネと言われるようになったんだとさ。
小島 新関 善二
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