むかし、むかしない、あっとこに、あほな人があったど。
まんまはうんと食って、ぶらぶら遊んでばかしいたんだと。
ある日のごど、気が向いで上の神さまんどこさ行ったんだってない。
何かあっがなと思って上がっててみだら、何もあがってねえもんで、
頭がわりくれだがら、わきさ行ってあごたっちゃんだと。
ほして、何もぬぐうもんねえもんだがら、
神さまのわきさ投げてあったへらで、ひょっとしりぬぐったんだと。
ほしたら、しりが鳴きだしたど。
「トーピスカラピス、スッカラピース、スカスカギンナン、ハッカッコ。」
って鳴ぎだして、それがなんぼにも鳴ぐんだってない。
困っちゃってしりなどつかんだってなんだって、
鳴ぎどおしで止まんねがら、まんまわげる方でちょっとしりこすったら、
ぴたっと止まっちまったんだと。
これはぜえもん授がった。
あほだ、あほだって言わっちっから、
こいづでまんま食う方法できっつぉど喜んでだと。
ほうして、ある日のばんげしな、
村一番の長者のすいしろさ忍びこんで、
娘が風呂さへえっどきちょっとへらでやったらばない、娘のしりが、
「トーピスカラピス、スッカラピース、スカスカギンナン、ハッカッコ。」
って、鳴ぎどおしに鳴ぎだしたど。
いやあ、娘も湯さへえったものの、鳴いでばかりいっから、
ぜえさ飛びこんだらみんなもおったまげちゃったど。
ほれがら、医者さまよ、ねぎさま(神主)よって、
直してもらう気になって頼んでも、直んねんだって。
こういうしりの鳴ぎ方初めてだし、なんでこだに鳴ぐんだべやど、
娘もみんなも困ったもんだと青ぐなってだどき、
あほだ、あほだと言わっちた男が、きれいな切れさへらつつんで、
「しりの鳴ぐのを直すー。しりの鳴ぐのを直すー。」
って、向いの道を通ってったんだと。ぜえの中でそれ聞ぎつけで、
「おらえさ来てくなんしょ。」
って、呼び止めらっちそのぜえさ行ったど。
娘のわきさ座って、ちらっと薬飲ましてない、
きれいな切れがら見せねようにへら出して、
まんまわげる方でちょっとなでだら、ぴたっと止まっちまったんだと。
「どういうごどして直した。なに薬飲ました。」
って聞かっちゃんで、
「金けつよりえん丹っていう薬飲ましだ。」
って言ったど。
直ったんでうんと喜ばっち、あほな男はお礼にうんと金もらって、
ぜえさけえってきてぜえ建でだりなんだりして、
きれいな嫁っこももらったんだとさ。
川俣 菅野 サノ
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