みどりの中に光る絹の町川俣
トップページ > 昔ばなし > 昔ばなし > わざくらべ(五人の旅人の江戸見物の話) > わざくらべ(五人の旅人の江戸見物の話)

わざくらべ(五人の旅人の江戸見物の話)

印刷用ページを表示する掲載日:2012年7月1日更新

むかし、むかし、
ある人が江戸見物さ行ぎたくで、行ぎたくで困ってたんだど。
いづが行っでみでえもんだあと思ってでも、
ながなが相手がねがったもんだから、行ぎかねでだと。
ほしたら、片足でビッコ、ビッコ、ビッコとやってきた人があったんだと。
「なしてびっこで歩ってんだ。」
って聞いだら、
「両方の足で歩ったんでは早すぎっから、
かたっぽの足で歩ってたくさんだ。」
って言うんだと。
ほんで、
「おら江戸見物さ行ぎてんだげんちょも、相手がねえがら、
おめえなじょったい。」
って聞いたんだと。
ほしたら、
「おらも行ぎてど思ってだげんちょも、ほんじゃぜひせでってくなんしょ。」
というごとになって、二人でずうっと行ったど。
ほしたらば、今度はかたっぽのまなぐおさえで、
鉄砲ぶっでる人がいだんだと。
かたっぽのまなぐでねらってんではど思って、言葉かげたんだと。
「どこさねらってんだ。」
って聞いだら、
「三里四方のアブの左のまなぐねらってんだ。」
って言うんだと。
「いや、いや、おらこうゆうわげで江戸見物さ行ぎでど思ったんだげんちょも、
あんだも行がねえが。」
って聞いだら、
「おらも行ぎでど思ってだげんちょも、ながなが行げねでだがら、
ほんじゃぜひせでってくなんしょ。」
っていうごとになってな。
三人でずうっと行っだら、今度はかたっぽの鼻めどおさえで、
プープー吹いでるやつがいだんだと。
そごでまた声かげでみたんだと。
「なんでかたっぽの鼻でプープー吹いてんだ。」
って聞いたら、
「三里向うの風車吹いでんだ。」
って言うんだと。
ほんで、
「江戸見物さ行ぎでど思ってだげんちょも、ながなが相手がながったから、
こういうわげで行んから、おめえさんも行がねえが。」
って聞いだら、
「おらも行ぎでど思ってだげんちょも、相手ねぇがったがら、
ひとづ世話さなっペ。」
ってごどになって、今度はよったりになってずうっと行ったんだと。
ほしたら、ずないすげ笠横っちょさかぶってない、
テッ、テッ、テッって歩ってきた人さ会ったんだと。
「なんで横っちょさ笠かぶってんだ。」
って聞いだら、
「真っすぐこの笠かぶってっと、冷えて凍っちまうくれえだがら、
これくれえ横っちょさかぶっでも、こんでも寒いくれえなんだ。」
って言うんだと。
ほんで、その人さも江戸見物ささそったんだと。
ほして五人でずうっと行って、江戸近ぐになっだら、
「お姫さまどはねくらして負がしたら、ご褒美たんとあげる。」
って言う立で札あったんだと。
ほんで、両方の足で歩ったんでは、早すぎるって人出したんだと。
ほして、お姫さまとはねくらしたんだってない。

初めは片ほの足で、ビッコ、ビッコってやってだが、
途中がら両ほの足使っだがらとっても早ぐて、
お姫さま負かしちまったんだと。
ほして向うさ行って一升だる持って、
引っけえしてこなんねがったんだってない。
ところが一升だる持ってきて、途中で枕にしてひらすみしてたんだと。
ほしたら、後がらお姫さまはねできたんだと。
こんじゃてえへんだ。
追いつかっちまうって、三里四方のアブの左のまなぐねらってだ人さ、
「見でくんつぇ。」
ってなってない。
両ほのまなぐ使って見だら、ひらすみしてで何ともしょねんだと。
負げっちまうんで、一升だるの底ねらってドーンとぶっぱなすと、
ド、ド、ド、ド、ドって酒が流れでだと。
片方の足で歩いでだ人が、こりゃてえへんだって、
またテッ、テッ、テッ、テッ、テッ、テッ、ってはねだら、
お姫さまどこ負がしちゃったんだと。

ほして、勝っちまっだら、その屋敷のさむれえたちは、
ほだ田舎のもんに、ご褒美くっちゃんのはもってえねって、
みんなごと土蔵の中さ閉じこめちまったど。
ほして、焼き殺してしめえどなってな、蔵の周りさ麦わら集べで、
むし焼きすっ気になったんだと。
ほしてボン、ボン燃して熱くなっちゃったがら、みな死んじまったべと思って、
蔵の戸開げてみだら、笠横っちょさかぶってだ人が、
真っすぐ立ってでみんな笠の中さへえってだがら、
五人してない平気な顔してだと。

ほうして、どうしてもご褒美やんなんねがら、ほんじゃしょわれるだけ、
五人のもんたちにくっちゃって、後がら馬で追っかけっペとなったど。
山ほどくれらっちゃんだと。
ほしたら途中で、三里向うの風車を片ほの鼻でプーッと吹いでだ人がない、
両ほの鼻でサーッとやったがら、いや、いや、ない、
さむれえたちは馬もろとも吹っ飛んじまったんだと。
ほして、宝物いっペえもらってきたんだとさ。

川俣 菅野 サノ


[表示切替]
モバイル | | トップに戻る