放射線と私たちの健康講演会(平成23年3月22日開催)
印刷用ページを表示する掲載日:2012年6月8日更新
放射線の専門家を川俣町に迎えて、町民の皆様が不安に思っている放射能問題と健康について、講演会を開催しました。
インデックス
講演会内容
- 日時 平成23年3月22日午後3時〜
- 場所 川俣小学校体育館
- 参加者 660名
- 講師 高村昇氏(長崎大学大学院教授、福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)
講演まとめ
- 医学的、健康的に放射線の影響はないことを伝えたい。
- 放射線は見えない、音がない、匂いがない、色がついてないゆえにやっかい。スクリーニング検査において機械で測ることではじめて分かる。
- 日常生活でも放射線は周りにたくさんある→レントゲン、胃透視、CT、がん治療等。人の役に立つものである。一方、原爆は人を殺す方法で使用。有益かどうかは浴びる量で決まる。害になる量を浴びなければ影響はない。
- 放射線は連続的に出ていることに不安がある。
- 放射能と放射線は違う。放射能の単位はベクレル、放射線の単位はシーベルト。たき火で例えると、放射能はたき火の火、放射線はたき火で暖まった空気。
- マイクロシーベルトの1000倍がミリシーベルト、ミリシーベルトの1000倍がシーベルト。
- 外部被ばくと内部被ばく→外部被ばくは原発やJCOの臨界事故。川俣町は外部被ばくの心配はない。放射能がついたものを食べる、飲む、吸うことが問題だが放射線量は少ない。
- 放射能が食べ物を腐らせることはない。放射能が半減したり、そのものを取り除いたりすれば問題ない。
- 半減期→放射能は安定しようとして放射線を出す。出さなくなる時間は物質によって決まっている。ヨウ素は8日で半分。セシウムは30年だが半減期が長くても、ずっとあるわけでなく、雨や台風で洗い流される。長崎、広島では原爆があったが、現在、放射能は全くないと言ってよい。
- 放射能は塵のようなものであり、取り除ける。基準値はあるが洗えばOK。パニックになる必要はない。
- 川俣町役場と山木屋郵便局の放射線の値の違いは風向き、地形などで影響が出る。いずれにしても非常に低い値。
- 1ミリシーベルトで人の遺伝子1個が傷つくが、人体は修繕する機能をもつ。すぐがんになるわけではない。CT一回で5〜10ミリシーベルト、胃透視で0.6ミリシーベルト。
- 一回に100ミリシーベルト浴びると人体に影響あると考えられている。
- 例→一時間あたり10マイクロシーベルト浴びるとすると体育館内では10分の1なので、一週間に換算すると、1マイクロシーベルト×24時間×7日=168マイクロシーベルト=約0.17ミリシーベルトとなる。
- 普通に生活していても被ばくしている。宇宙線、大地、体内からも放射線が出ている。
- 日本人は年間に約2.4ミリシーベルト被ばくしており、放射線と共存している。ブラジル、インドは2.4ミリシーベルトの5倍。今は普通にない放射線が出ているが医学的には何も問題ない。
- これまで一週間食べていたものはどうか→基準値→一年間食べ続けたら危険な値。厳しく設定されている。だが、これはあり得ない。なぜなら放射能は半減期があるから。
- 少し基準値を超えたものを一週間食べて飲んでも影響ない。
- 井戸水は蓋を開けっ放しでは放射能が入るが、蓋をしてポンプでくみ上げている場合、空気中の放射能が入ってくるとは考えにくい。心配ならば、飲まない、生活用水として使用すれば良い。
- わき水は蓋をしていないので生活用水として使用し、飲むのは念のため控える。使い分けをすること。
- 野菜の基準値は採れたばかりの状態。つまり、土がついた洗う前の状態であり、野菜は出荷の時に洗えば値は下がる。
- 放射能は洗って落とす。野菜も人体も同じ。野菜は土がついたままでは食べないのが普通。洗うこと。
- モニタリング情報の収集→水と野菜は基準値を下回れば県は安全宣言出すべき。水が不安なときはミネラルウォーターで。
- 長崎の原爆とチェルノブイリ原発事故を踏まえると健康被害はない。風評に惑わされないよう、冷静に情報収集を!
- 病院は地域住民の命を守るため、正しい知識と冷静な行動を!
Q&A
- 人体に影響がある放射線量はどのくらいか。
→最近は念のため50ミリシーベルトとしている例もあるが、100ミリシーベルトが基準である。(講演中で説明あり) - 県境で見ると他県までの距離はそう違いがないところもある。なぜ福島県だけが危険という扱いなのか。
→放射能は均一に拡散しない。風向きや地形などの影響を受ける。(講演中で説明あり)医学的な見地からは、現在のモニタリングポストの状況から判断すると30km以上に屋内退避区域を広げる意味はない。 - 雨が降ったら触れないようにと広報されている。部活の最中に雨が降ったら屋内退避したほうがよいのか。またどのくらいの放射線量(マイクロシーベルト)ならば気をつけなければならないのか。またプールはどうすればよいか。
→(現在の放射線量は人体に影響がない。)雨が降れば普通傘を差す。その程度の対応でよい。しかし子供を守るという意識も大切なので、どしゃ降りのときは活動を控えるような対応も必要と考える。プールは今すぐ再開することはない。5〜6月まで現在の状況が続いているとは考えにくいが、モニタリングポスト結果から判断すべきである。 - 中学生の子供が、甲状腺がはれていると医者の診断を受けている。はれているのが通常の状態ということであるが、より影響を受けることはないか。
→ 単に大きいだけと推測される。他人と比較して特別な対処は必要ない。 - 万一の場合(原発の爆発等)、住民としてどのような対応をとるべきか。
→20km以内は退避、30km以内は屋内退避は、政府として安全に配慮して指示している。政府の指示に従うべきである。 - マスクを着用する、洗濯物は屋内で乾燥させる、換気扇は回さない。この状況はいつまで続ければよいか。
→放射線を防ぐ観点では、30km圏外は心配する必要がない。(放射性物質は人体に影響を与えるレベルになく、半減期があるため影響はどんどん小さくなっていく。) - 甲状腺への悪影響など子供への影響が心配である。5〜10年後のリスク、後々の健康への影響はどうか。
→ これまでの事象は、広島・長崎の原爆、チェルノブイリ事故とは状況が異なる。現在の状況からは子供も含めて影響はなく、今後の健康リスクもない。 - 被曝の国際基準の原点は何か。
→放射線によるがん発生等の影響については、人類は経験が少ない。広島・長崎の原爆、チェルノブイリ事故しかない。1940年代からの継続調査や経過から基準は作られている。 - 内部被曝の基準は。
→内部被曝も外部被曝も基準は同じである。 - 雨にぬれた衣類を袋に入れて屋外に保管している。いつまで置いておけばよいか。
→半減期があるためいつかは着れるようになるが、指示を待ってほしい。ちなみに放射能はチリと同じで洗い落とせばよい。 - 田の作付けはできるのか。
→長崎では夏に被曝し、半年後に復興が開始された。長崎とは状況が違うが安全宣言が出されれば普通に作付けできる。 - 病院等で被曝者が近くにいる場合、二次被曝はあるのか。
→ 放射能は洗えば落とせるため、適正に対処してほしい。 - 糖尿病患者は野菜中心の食生活である。洗えば問題ないということだが、糖尿病、腎臓疾患、薬の服用者も普通と同じでよいのか。
→基準値は健常者にあわせているが、基準値にはもともと幅を持たせているため、野菜を多くとったとしても支障はない。 - 水よりも牛乳のほうが放射性物質の検出量が多い。水や草を摂取した乳牛に放射性物質が集まったと考えられる。そうすると乳幼児100ベクレルの厚生労働省の見解は無意味と思われるがどうか。
→ 放射線は乳腺に集まりやすいため、水などから牛乳へ濃縮されたと考えられる。母乳を通じて濃縮される可能性もあるため、母親はミネラルウォーターを利用すれば安心できる。 - 放射線過敏症やアレルギーなどの病気はあるのか。
→ 放射線はエネルギーがあるだけである。何も心配しなくてよい。 - イワナ、ヤマメなどは食べられるのか。
→ ため池か流水かで異なるが、魚体内の放射性物質が心配な場合は測定してもらうしかない。